ギャラリー小柳について
http://www.gallerykoyanagi.com/
現代アートに興味をもったのは、高校のころ購読していたファッション誌がきっかけでした。「今月の注目イベント」のようなコーナーで、素敵だな、気になるな、と思う情報を見かけると、高い確率でギャラリー小柳のクレジットが入っていた。
2002年の11月に佐賀町食糧ビルディングの取り壊しに伴うクロージングイベント、Emotional Site展のお手伝いをしたのがきっかけで、新川という隅田川沿いにある新しいギャラリーコンプレックスの、週末だけ開くギャラリー小柳のビューイングルームに立たせてもらえるようになり。同じ建物には小山登美夫、タカイシイ、Shugoartsの各ギャラリーが入ってました。
ギャラリーに立つといっても、本を読んだり勉強したり自由に過ごしていいよ、と言ってくださっていて、他のギャラリーでオープニングがある日はパーティにまで参加していた気がする...
建物の2階奥にあったビューイングルームは杉本博司さんの設計の空間で、縦型の引き出す形式の作品の収納システムも彼本人の設計。大型作品が中心に保管されており、そこまで来客数も多くなかった。静かな空間でひとり佇んでいると、まるで自分だけのコレクションに囲まれているようで、それはそれは贅沢な時間だった。
杉本作品以外だと、下記のようなアーティストの作品が保管されていました。
マルレーネ・デュマス、ルイザ・ランブリ、中村哲也、須田悦弘、堂本右美、野口里佳、ヘレン・ファン・ミーネ、レイチェル・ホワイトリード(順不同、敬称略)
もちろんギャラリーなので、作品を購入することも出来ました。お客様に価格を聞かれたら、銀座のギャラリー小柳の本部(という言い方はおかしいけれど)に電話をして値段を聞いて、お客様にお伝えする、という形をとっていた。詳しい価格は控えますが、1,000万円以下で割と高額なものもあり、現代アートってこんなにも高いのね!とびっくりした記憶が。
これを約1年間くらい、不定期でつづけた。
その後、NYと東京に編集部があり、ハイアートとストリートアートの両方を扱う雑誌でインターンを1年以上することになるのですが、ややあって、なぜかインターネット広告まわりのカタギな仕事につくことになり(笑)、アート業界そのものとは、しばらく距離がありました。引き続き小柳以外で様々なイベントのお手伝いはたまにしてましたが、本業があまりに大変なことが多く、あんまり展覧会にも行けてなかったかな。
それが何故か、昨年から徐々に、ふたたび現代アートの催しに多く参加するようになり。今年の5月にアートバーゼル香港という展示会を見に行き、勇気を出してあこがれの小柳敦子さんにお声を掛けてみたのですが、あれは緊張した~。
以前、何かの記事で読んだのですが、ギャラリー小柳では小柳敦子さん自身が本当に欲しいと思う作品、というのがセレクトの基準と書いてあったように思います。たとえば私自身は白金台の松岡美術館の松岡コレクションなどを見ても思うのですが、蒐集した人の熱意というか、一貫した姿勢が見えるコレクション/セレクトには心を動かされる。
アートを鑑賞する体験というのは、コンセプトの理解といったような左脳的なものも当然あるとは思うのですが、とくに投機的な目的以外でコレクションするとなると、いかにその作品に心を掴まれたか、というのが重要になってくると思います。つまりそれは、個人的な感覚を大切にする必要があるということ。その感覚というのは茂木健一郎さんがだいぶ前に提唱されていた、クオリアという言葉がそれに当たると思うのですが。
私自身はとくにアートの専門教育も受けていないですし、やりたい!とおもったからやろうとしているだけ、という単純な人間ですが、今後セレクトしていく作品は微細な感覚を大切にして、やっていくしかないな、と思ってます。
先日、オークション関連のお仕事をされている女性にお話しを伺った際に、なかなかギャラリー1本でやっていくのは難しいよ、ということをお聞きして。香港に好きなギャラリーがあるのですが、そこなんかもワインのインポーターなんかもしていたりする。私の場合、ファッションやインターネット関連の何かしらの仕事を2本立てでやっていくことになると思います。
余談ですが、先日小柳に伺ったら、たまたまかもしれませんが、プライスリストが日本円ではなくUSドル表記で、最初はすこし驚いたのですが、その後やっぱりなー、と思いました。高額な作品を多く扱うギャラリーでは国外の顧客が多いようなので。あとは為替の影響を考えると日本人の顧客でも、USドルで買いたいという人がいるのかしら...あくまで想像だけど。